
更新日:2025/10/07
2025年、ノーベル生理学・医学賞に大阪大学特任教授の坂口志文(しもん)氏(74)が選ばれ、個人での日本のノーベル賞は29人目。
坂口志文(しもん)氏が受賞した理由は、免疫の暴走を防ぐ「制御性T細胞(Regulatory T cells、略してTreg細胞)」の発見と仕組みの解明です。
本記事では、坂口氏の功績とTreg細胞の働き・医療応用について、初心者にもわかりやすく紹介します。
坂口志文氏とは?ノーベル賞受賞の理由
基本プロフィール
坂口志文(さかぐち しもん)氏は1951年1月19日生まれの74歳(2025年現在)。
滋賀県長浜市出身で、京都大学医学部を卒業後、免疫学の研究に従事。
大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授として、制御性T細胞(Treg細胞)の発見とその免疫制御機構の解明により、2025年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
項目 | 内容 |
---|---|
氏名 | 坂口 志文(さかぐち しもん) |
生年月日 | 1951年1月19日(滋賀県長浜市出身)74歳 |
学歴 | 1976年京都大学医学部卒業・医学博士(京都大学) |
主な所属 | 大阪大学免疫学フロンティア研究センター 特任教授・名誉教授/京都大学名誉教授 |
研究分野 | 免疫学(制御性T細胞・免疫寛容) |
主な受賞歴 | 2025年ガードナー国際賞、 クラフォード賞、ノーベル生理学・医学賞(2025年) |
🧠 研究哲学:「患者のための免疫学」
坂口氏は「理論より実用」「論文より社会貢献」を重視する姿勢で知られています。
彼の講演では、「免疫とは自己を守るためのシステム。しかしその制御を誤れば自己を攻撃する」と語り、免疫の暴走を防ぐ仕組みの解明こそが人類の健康に直結すると強調しています。
🌍 国際的なキャリアと影響力
●米国ジョンズ・ホプキンス大学、スタンフォード大学、スクリプス研究所などで研究
●制御性T細胞の発見(1995年)は当初懐疑的に見られ、「眉唾もの」とされたが、CD25やFoxp3の同定により世界的に認知
●2016年には制御性T細胞を活用した治療法開発のため、バイオベンチャー「レグセル(RegCell)」を創業
●世界中の免疫学者・製薬企業と連携し、臨床応用への橋渡しを続けている
👨👩👧👦 家族と支え合う研究人生
妻・教子(のりこ)さんも研究者であり、アメリカ留学時代から共に研究活動を支えてきたパートナー。
文化や言語の壁を乗り越え、日本人研究者として励まし合いながら「研究を続ける意志」を共有してきたと語られています。
制御性T細胞(Treg細胞)とは?:免疫のブレーキ役
私たちの体には、外敵から身を守る複雑な免疫システムが備わっています。
Treg細胞は体内の免疫細胞(リンパ球など)のわずか数%を占めるに過ぎませんが、自己に対する免疫反応を抑制する働きがあります。
Tregの存在は1995年に坂口志文先生が提唱し、その機能が次第に明らかになりました。
免疫に広く関わるTregを増やしたり、除去したりすることで、病気を治療しようという研究が世界で進められています。
Treg細胞の役割
メカニズム | 内容 |
---|---|
サイトカイン分泌 | IL-10やTGF-βなどを分泌し、免疫細胞の働きを抑制 |
細胞接触による抑制 | CTLA-4などの分子で他のT細胞の活性を直接抑える |
成長因子の競合 | IL-2などを消費し、他のT細胞の増殖を妨げる |
抗原提示細胞の制御 | 樹状細胞などの働きを弱め、免疫反応の開始を防ぐ |
- 免疫反応の過剰な活性を抑える
- 自己免疫疾患の予防に関与
- 炎症やアレルギー反応の抑制にも関与
なぜ重要なのか?
免疫には「攻撃」と「抑制」のバランスが必要です。
Treg細胞は、免疫の暴走を防ぐブレーキ役として機能します。
Treg細胞の分化とFoxp3遺伝子の重要性
- 胸腺由来(tTreg)と末梢誘導型(pTreg)が存在
- Foxp3遺伝子がTreg細胞の機能を決定
- Foxp3の欠損により重度の自己免疫疾患を発症することが判明
Treg細胞が関与する病気と治療の可能性
- 自己免疫疾患(関節リウマチ、1型糖尿病など)
- がん(免疫逃避に関与)
- アレルギー・炎症性疾患
治療応用例
- 低用量IL-2療法
- 免疫チェックポイント阻害薬との併用
よくある質問(FAQ)
- QTreg細胞はどこで作られますか?
- A
胸腺で分化するtTregと、腸管などの末梢組織で誘導されるpTregがあります。
- QTreg細胞が多すぎるとどうなりますか?
- A
がん細胞の免疫逃避を助ける可能性があり、がんの進行に関与することがあります。
- QFoxp3遺伝子とは何ですか?
- A
Treg細胞の機能を制御する転写因子で、欠損すると自己免疫疾患を引き起こします。
ノーベル賞受賞後の予定
授賞式は12月10日にストックホルムで開かれる。
賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億7000万円)で、受賞する3人で分け合う。
関連リンク・参考情報
「制御性T細胞」って初めて聞いた人もいるかも知れませんが、実は小学生でも知っています。
それが『はたらく細胞』と言う人気漫画です。
※自分で読むも良し、子どもへのプレゼントにも。
ノーベル生理学・医学賞まとめ
2025年10月、ノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文氏を紹介しました。
坂口志文氏の制御性T細胞の発見は、免疫学の根本的な理解を深め、今後の医療特に自己免疫疾患・がん・アレルギーなどの治療法の進化に大きく貢献するものです。
ノーベル賞受賞はその価値を世界が認めた証。
今後の研究と応用に期待が高まります。
・ブロガー:2021年9月ブログ開設
・趣味:旅行(国内・海外)、食べ歩き、写真撮影
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