更新日:2024/11/07
急に冬らしくなってきましたね。
暖房をつけるべき季節になりました。
節電も要請されているご時世ですが、暖房費をケチって健康を害しては本末転倒です。
では冬の室温は何度ぐらいを目標にすれば良いのでしょうか。
世界保健機関(WHO)は2018年に冬の室内最低温度を「18℃以上」と強く勧告、小さい子供や高齢者に対してはさらに暖かくするように求めています。
それは、暖かい部屋で過ごすことこそが冬場の最も有効な健康法と考えられるからです。
英国でも2011年に住宅法を改正し、冬季の住宅内許容室温を18℃と定めています。
冬季の室内温度が18℃未満で血圧上昇・循環器疾患の恐れがあり、16℃未満で呼吸器系疾患への抵抗力が低下、
12℃以下で血圧上昇、心臓血管疾患リスクが高まるからです。
日本では、少なくとも私の知る限り室温規制はありません。
今年の冬は、コロナとインフルエンザのダブル感染が増えると予想されています。
これからの季節出来るだけ部屋を暖かくして過ごしましょう。
冬の室温は何度が良いの?
18℃以上がおすすめ。
WHO Housing health guidelines 2018
出典:「WHO Housing and health guidelines」
このレポートは世界中の研究のレビュー(専門家が研究論文を詳しく読んで評価すること)を
まとめてガイドラインとしたもの。
ガイドライン原文はこちら。
18157_WHO Housing and Health Guidelines_160 x 240mm For Web (plala.or.jp)
日本語訳 一部分はこちら。
Microsoft Word – WHO Housing health guidelines 2018
世界各国の基準
特にヨーロッパは室温(断熱)に非常に厳しい国です。
イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンといった諸外国は、「暖かい家は”人権”である」といった思想のもと、
最低室温は18℃~23℃でなければならないといった法令で規定されています。
ドイツ
ドイツでは、居室において
・6~23時の間、 20℃
・23時以降6時までの間 18℃
イギリスの保健省冬季の室温指針
・21℃以上(推奨温度)、健康な室温
・18℃(許容温度)、健康リスクの下限
・16℃未満、呼吸器疾患に影響あり
・9~12℃、血圧上昇、心血管疾患のリスク
・5℃、低体温症を起こすハイリスク
とそれぞれ室温が低くなると健康リスクが増大する旨、警鐘を鳴らしています。
※日本でも死亡例があります。高齢者は特に要注意です。
国土交通省~断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告~
本調査は、断熱改修などによる生活空間の温熱環境の改善が、居住者の健康にどのような影響を与えるかについて、
改修前後の健康調査結果等を用いて、医学・建築環境工学の観点から検証する調査です。
得られつつある知見
住宅の断熱改修をすると、血圧が平均で3.1mmHg低下する。
1. 室温が年間を通じて安定している住宅では、居住者の血圧の季節差が顕著に小さい。
2. 居住者の血圧は、部屋間の温度差が大きく、床近傍の室温が低い住宅で有意に高い。
3. 断熱改修後に、居住者の起床時の最高血圧が有意に低下。
4. 室温が低い家では、コレステロール値が基準範囲を超える人、
心電図の異常所見がある人が有意に多い。
5. 就寝前の室温が低い住宅ほど、過活動膀胱症状を有する人が有意に多い。
断熱改修後に就寝前居間室温が上昇した住宅では、過活動膀胱症状が有意に緩和。
6. 床近傍の室温が低い住宅では、様々な疾病・症状を有する人が有意に多い。
7. 断熱改修に伴う室温上昇によって暖房習慣が変化した住宅では、
住宅内身体活動時間が有意に増加。
※断熱改修等による居住者の健康への影響調査 概要はこちらから
001270049.pdf (mlit.go.jp)
暖房の「設定温度」は何℃が良いの?
環境省が推奨する暖房の設定温度の目安は「20℃」。
現在の自分が住む家の断熱性能がどの程度なのか、手っ取り早く判断する方法がある。
それは脱衣所の室温を測ること。
脱衣所の室温はリビングや居間と違って積極的に暖房されない場所、つまり「家の寒さ」が表れやすい場所だから。
運転モードは「自動運転」
暖房の運転モードは、「弱・中・強・自動運転」から選択出来る機種が多いです。
「自動運転モード」であれば、エアコン側が最も効率の良い動作を自動で行ってくれるので節電につながります。
風向きは「下向き」
暖かい空気は室内の上部に、冷たい空気は室内の下部に溜まります。
暖房時の風向きを「下向き」に設定したほうが効率よく室内を暖めることができます。
コールドドラフト現象って何?
隙間なんて無いはずなのに、窓の方からひんやりとした風を感じたりしませんか。
「コールドドラフト現象」とは、部屋の中の暖かい空気が、外気で冷えた窓に触れ、そこで冷やされて下降気流が発生。
結果、床づたいに冷たい空気が流れてくる現象です。
このまま放っておくと、部屋の上側は暖かい空気、下側は冷たい空気という温度差のある2層に分かれてしまいます。
対策としては
・厚手で床まで届くようなカーテンを掛ける。
・窓の下に断熱パネルや防寒ボード、ダンボールを置く。
・サーキュレーターで空気をかき混ぜ、温度ムラを無くす。
といったことが考えられます。
カーテンは、”リターン”と呼ばれるサイドを巻き込んだスタイルにするとより効果的です。
暖房時の熱は窓から逃げていく
日本健材・住宅設備産業協会の試算では、冬の暖房時の熱は、窓などの開口部から約58%が流失するとしています。
窓の断熱をしっかり行えば、熱の流出を防ぎ室内を効率的に暖めることが出来ます。
断熱とは文字通り“熱を断つ”ことで、冬は外へ逃げていく熱を、夏は内側へ入ってくる熱を断つ。
根本的に改善するなら「内窓(二重窓)」を取り付けるか、
複層ガラスでできている「高性能の窓」に交換するのが一番。
予算があるならリフォームも検討してみてください。
【無料】リフォームの見積り比較サイト【タウンライフリフォーム】窓ガラスの交換に200万円の補助金
住宅の省エネ化を推進する政府は、ガラス交換や内窓の設置、外窓の交換のリフォームに対して一戸当たり200万円までの補助金がでます。
2023年から本事業の登録事業者である「窓リノベ事業者」と契約し、窓(ガラス)を交換(断熱改修)するリフォーム工事が対象となります。
>>【先進的窓リノベ事業】窓をリノベして省エネ高断熱化最大200万円補助金
短時間で電源をON・OFFするよりも「つけっぱなし」
30分程度の短時間であれば、スイッチを切らず、つけっぱなしにした方が節電につながります。
出典:空気のお悩み調査隊がゆく | 空気とくらし | ダイキン工業
夜間も暖房を
眠っている間に部屋を暖めておくのはもったいない、と思うかも知れませんが、寝室の室温が10℃以下になると、高齢者に低体温症があらわれる可能性があります。
高齢者のいる家庭では、夜間も暖房はつけておきましょう。
暖かい居間で過ごした後に寒い寝室に入ると、交感神経が刺激されて目が覚めてしまい、寝つきが悪くなります。
そのため気持ちよく眠れる室温は、16~19度の範囲といわれています。
衣類を多く着て、布団もたくさんかけて眠ると寝返りが妨げられます。
自然な寝返りができないと、睡眠の質が悪くなってしまいます。
また、電気毛布をつけたまま眠ると、睡眠中の自然な体温変化が妨げられるので、眠るときにはスイッチを切りましょう。
※睡眠についてはこちらの記事を参考にどうぞ。
エアコンのフィルターや室外機の掃除を
エアコン内部が汚れると、暖房効率が下がり余分な電力がかかります。
室外機を汚れたまま放置すると、目詰まりを起こし無駄な消費電力の増加につながります。
ヒートショックって何?
「ヒートショック」とは気温の変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こることをいいます。
この血圧の乱高下に伴って、脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞などの病気が起こります。
ヒートショックは10℃以上の温度差がある場所は危険とされており、冬場に暖房の効いたリビングから脱衣所に移動した際には、寒さに対応するために血圧が上昇。
そこで衣服を脱ぎ、寒い浴室へ入るとさらに血圧は上昇します。
浴槽に入ると、急に身体が温まるため、血圧が急降下。
そしてまた脱衣所へ戻ると寒い、ということで血圧が変動し心臓に負担がかかります。
特に冬は注意が必要です。
より冷え込む深夜や早朝の入浴は、できるだけ避けた方が無難です。
ヒートショックを防ぐには
浴室、脱衣所を暖める
予防として暖房の効いた部屋との温度変化を軽減するために、脱衣所に持ち運びが簡単にできる暖房器具を置くなどの工夫をしましょう。
また浴室は、シャワーでお湯張りすることで10℃ぐらい浴室の温度をあげることができます。
湯温は低めに
お風呂の温度が42℃以上になると、心臓に負担をかけることが知られています。
湯温は、38~40℃に設定して入浴を。お湯につかるのは10分程度を目安に。
また、入浴する際は手や足などの心臓から遠い場所にかけ湯をして、身体をお湯に慣れさせましょう。
首までお湯に浸かることも心臓に負担をかけるので、浸かるとしても胸のラインぐらいまでに。
浴槽から急に立ち上がらない
高齢者の浴槽内での死亡者数は4,900人で、不慮の溺死事故の71%を占めています。
浴槽で倒れて溺れる可能性がありますので、浴槽から出る時は、手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がりましょう。
入浴前後に水分を摂取
入浴すると、汗をかくので脱水状態に陥ります。
また、熱中症のような状態になりやすいので、入浴前後に300ml程度の水分摂取を心掛けましょう。
※興味ある人はこちらの記事も参考にどうぞ。
>>【1日に必要な水分量】人は1日に何リットルの水を飲めば良いのか?
ヒートショックはお風呂だけではない
特に、早朝のトイレに気をつけましょう。
ヒートショックは10℃以上の温度差がある場所は危険とされており、体が温まっている寝床から早朝にトイレに行ったりするとヒートショックが起こる可能性があります。
気持ちよく眠っているときには、布団の中の温度はほぼ32~34度。
あなたが早朝トイレに起きたとき、トイレは何度くらいまで下がっているでしょうか。
仮に室温12度だとすると、温度差は20℃にもなります^^;
対策としては、
・暖房便座の場合は、温度設定をMAXにする。
・セラミックヒーターを置く。
特に高齢者や高血圧の持病がある人は、夜中や明け方に起きてトイレへ行くときは十分に気をつけてください。
ヒートショック予報
ヒートショック予報は、気象情報にもとづく家の中でのヒートショックのリスクの目安です。
お住まいの構造や設備、個々の体調によって、健康への影響は異なります。
参考までにどうぞ。
室温18℃以下は要注意まとめ
寒い部屋より温かい部屋の方が過ごしやすいのは、誰もが経験的に理解出来ると思います。
住宅を「寒い家」から「温かい家」へ改修するだけで、健康的に暮らせます。
ただこれまで日本では「健康のため室温を上げましょう」とは言われてこなかった。
日本の住宅は昔から夏の気温や湿度を重視して建てられ、冬は何とでもなるという考えが当たり前だったから。
室温(断熱)に関しては野放し状態だったのが現状です。
まずはWHOが勧告する18℃以上の室温を目指しましょう。
窓やカーテンを見直したり、部屋の隙間を埋める工夫を。
窓側に暖房器具を設置すると、窓からの冷気を押しとどめ、暖房効率を上げることができます。
また、加湿器を併用して空気の乾燥対策をすることも大事です。
室内で快適な湿度は、40~60%とされています。
出来れば40~60%を維持しましょう。
但し高すぎると結露やカビの原因になるので、室内の湿度40% が理想です。
トイレやお風呂の脱衣所に小型のストーブを設置するのも良いですね。
特に高齢者は注意が必要です。
出来るところから対策を行い、今年の冬を乗り切りましょう。
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