更新日:2024/12/16
「認知症」とは、様々な脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態をいいます。
2020年には、65歳以上の約6人に1人にあたる約514万人が認知症を発症、2040年には約5人に1人になるといわれています。
認知症になると様々なコトが問題になります。
一番やっかいなのは、資産管理や相続の問題です。
認知症になった親の代わりに家族が手続きしようとしても、本人の意思確認ができなければ「成年後見制度を利用してください」と言われます。
「成年後見制度」とは、財産管理や意思決定の支援を目的とした制度ですが、高額な後見人費用や家族以外の後見人が選ばれるリスクが伴います。
認知症によって起こる資産管理の問題や相続について紹介します。
親がボケ始めたら、早めに対処しましょう。
認知症になると
認知症になると、「通帳・カード・印鑑をなくした問題」が発生します。
親に聞いても「暗証番号を忘れた」「どれが銀行印かわからない」と言われます。
銀行に行って手続きしようとしても「成年後見制度を使っていただかないと、通帳の再発行はできません、暗証番号の再設定もできません」と言われ、手続きできません。
銀行は、相続の問題に巻き込まれたくないため、認知症が分かると手続きが難しくなります。
「成年後見制度」申立て
成年後見制度を使うには、家庭裁判所へ申立てが必要になります。
成年後見制度を利用する際、裁判所に提出する資料の一つに「財産目録」があります。
本人が、どこに、何を、いくら持っているかを裁判所に知らせるためです。
預貯金・現金、株式などの有価証券、生命保険、不動産、貸しているお金、負債(借りているお金)、もらう予定の相続財産目録まで提出が必要になります。
後見申立てにあたって、そろえる資料や記入する書類が多岐に渡り、けっこう大変です。
成年後見人の報酬
本人の財産額 | 報酬額 |
~1,000万円 | 月額2万円 |
1,000万円以上5,000万円以下 | 月額3〜4万円 |
5,000万円~ | 月額5〜6万円 |
財産目録を見て預貯金残高がそれなりにあると、裁判所は家族がいても、裁判所に営業登録している弁護士や司法書士を後見人に指定するようです。
2023年に裁判所が選任した成年後見人は家族が2割で、8割は親族以外の弁護士や司法書士でした。
後見人費用は、最低月額2~3万円からで、基本報酬を仮に毎月5万円とすると、毎年60万円、5年で300万円、10年なら600万円かかる計算になります。
後見人の報酬が増えるほど、本人の財産、ひいては家族の遺産は目減りします。
しかも報酬を決定するのは裁判所と後見人であり、一度家庭裁判所が選任した後見人に対して、変更や解任を認めてもらうことは困難です。
家族以外が後見人になると
後見される人にお金がなければ、弁護士などが選ばれることはなく、裁判所は家族を後見人にします。
お金(後見人報酬)が取れるか取れないかで後見人を決めているのが実情らしい。
後見人が決まれば、通帳が再発行され、暗証番号も再設定されます。
しかし、それは、後見人が今後仕事をするために必要な手続きで、通帳やカードが親や家族に戻ってくることはありません。
実印や印鑑登録証も提出を求められるようです。
後見人制度を利用すべきか否か
先日父親が亡くなり、遺言書は無かったため、遺産相続には「遺産分割協議書」の作成が必要です。
遺産分割協議は相続人全員で合意する必要があるため、認知症の相続人がいると遺産分割協議はできません。
遺産分割協議をするためには、成年後見制度を利用するしかありません。
但し、成年後見制度はデメリットが大きく、かなり使いづらい制度です。
弁護士さんに認知症の人がいる場合の遺産相続をどうすべきか、個別に2回相談したところ、2回とも「後見人制度は利用しない方がよい」との意見でした。
成年後見制度まとめ
成年後見制度についてご紹介しました。
初めてこういう制度があることを知った人も多いかと思います。
私も「認知症の人がいると遺産分割協議ができない」ということは、父が亡くなって初めて知りました^^;
もちろん遺産分割協議なしに「法定相続分」どおりに遺産分割を行うことも可能であり、遺産分割協議が未了のまま放置する場合もけっこうあるようです。
親が生きている時に、遺産相続の話がしにくいのは当たり前ですが、いざ相続となるとこれまた大変になります。
特に認知症の人がいる場合は、生前に何らかの対策をおすすめします。
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