更新日:2023/08/11
あなたは「ヒトパピローマウイルス」って聞いた事ありますか。
2023年8月1日東京都中野区は、女性の子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)感染を予防するワクチン接種について、
区内に住む小学6年~高校1年相当の男子の接種費用を助成することを決めた。
区によると、男性への助成は都内自治体では初めて。
今回は、ヒトパピローマウイルスワクチン接種について解説します。
HPV感染症を防ぐワクチン(HPVワクチン)は、小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、
定期接種が行われています。
接種対象となる人はぜひご検討下さい。
ヒトパピローマウイルス感染症って何?
「ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus:HPV)」は、
性的接触のある女性であれば80%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。
もちろん女性だけでなく、性行為経験がある男性のうち90%以上が感染する、身近なウイルスです。
「パピローマ」とは乳頭腫の意味で、簡単に言えばイボを作るウイルス。
ヒトパピローマウイルス(HPV)が感染する部位によって、
子宮頸がんをはじめ、肛門がん、膣がん、陰茎がん、中咽頭がんや、尖圭コンジローマ等、
多くの病気の発生に関わっています。
最近は若い女性の子宮頸がん罹患が増えています。
ヒトパピローマウイルスに感染するとどうなる?
HPVに感染しても症状はありません。
HPVは70%が1年以内に、90%以上は2年以内に、免疫力により自然消失するため、
治療は必要ありません。
しかし、10%程度は感染が持続し、3年~8年持続感染が続くと、
ウィルスによって細胞異常(異型細胞、異形成)を起こし、その一部は癌に進展します。
最終的に0.1~0.15%の方(毎年1~1.5万人)が子宮頸がんになります。
また尖圭コンジローマは、陰部にいぼ状の病変がみられるため、
医師の診察(視診)によって診断がつくことが多いです。
HPVワクチン接種の黒歴史
HPV ワクチンは、平成 22年(2010年) 11 月から子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業として接種が行われ、平成 25年(2013年)年4 月に予防接種法に基づく定期接種に位置づけられました。
国は、平成 25年(2013年) 6 月から積極的な勧奨(個別に接種を勧める内容の文書をお送りすること)を一時的に差し控えていました。
令和3年(2021年) 11 月に、専門家の評価により「HPV ワクチンの積極的勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当」とされ、
令和 4 年 4 月から、他の定期接種と同様に、個別の勧奨が再開されています。
HPVワクチン接種機会を逃した人
誕生日が平成9年(1997年)4月2日~平成18年(2007年)4月1日生まれの女性の中に、
通常のHPVワクチンの定期接種の対象年齢の間に接種を逃した人がいます。
そこでまだ接種を受けていない方に、あらためて、
HPVワクチンの接種の機会(キャッチアップ接種)が提供されています。
※平成18年4月2日~平成20年4月1日生まれの女性も順次接種の対象となります。
ワクチン接種の効果
現在、日本国内で使用できるワクチンは、防ぐことができるHPVの種類によって、
・2価ワクチン(サーバリックス)
・4価ワクチン(ガーダシル)
・9価ワクチン(シルガード9)の3種類があります。
サーバリックス、ガーダシルは、
子宮頸がんをおこしやすい種類であるHPV16型と18型の感染を防ぐことができ、
子宮頸がんの原因の50~70%を防ぎます。
シルガード9は、HPV16型と18型に加え、31型、33型、45型、52型、58型の感染も防ぐため、
子宮頸がんの原因の80~90%を防ぎます。
ワクチン副反応
頻度 | 2価ワクチン (GSK・サーバリックス) | 4価ワクチン (MSD/ガーダシル) | 9価ワクチン (MSD/シルガード9) |
---|---|---|---|
10%以上 | 痒み、接種部位の痛み、 赤み・腫れ、腹痛、 筋痛・関節痛、頭痛、 疲労など | 接種部位の痛み・赤み・ 腫れ | 接種部位の痛み・腫れ・赤み、 頭痛 |
1~10%未満 | じんましん、めまい、 発熱など | 接種部位の痒み、頭痛、 発熱など | 浮動性めまい、悪心、 下痢、発熱、疲労、 接種部位の痒み・内出血など |
1%未満 | 注射部位の知覚異常、 感覚鈍麻、 全身の脱力 | 下痢、腹痛、手足の痛み、 筋骨格硬直、 接種部位の硬結・出血・ 不快感など | 嘔吐、腹痛、筋肉痛、関節痛、 接種部位の出血・血腫・硬結、 倦怠感 |
頻度不明 | 手足の痛み、失神、 リンパ節症など | 疲労感、失神、嘔吐、 筋痛・関節痛など | 感覚鈍麻、失神、 手足の痛みなど |
頻度は非常に少ないですが、
・アナフィラキシー(約96万接種に1回の割合)
・ギラン・バレー症候群(約430万接種に1回の割合)
・急性散在性脳脊髄炎(ADEM)(約430万接種に1回の割合)
などの重い症状が報告されています。
ワクチンの禁忌は?
HPVワクチンによる強いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがある場合以外に禁忌はありません。
ワクチン接種スケジュール
同じワクチンを合計2回または3回接種します。
3種類いずれも、1年以内に規定回数の接種を終えることが望ましいとされています。
予防接種一覧
問い合わせ先
定期の予防接種は、各市町村が主体となって実施しています。
お住まいの市町村における接種方法(いつ・どこで・どのように受けられるかなど)については、
市町村の予防接種担当課にお問い合わせください。
福岡市の場合
厚生労働省相談窓口
・子宮頸がん予防ワクチンを含む予防接種、インフルエンザ、性感染症、
その他感染症全般についての相談
厚生労働省 感染症・予防接種相談窓口
TEL:0120-331-453
受付時間:月曜日~金曜日 午前9時~午後5時(ただし、祝日・年末年始除く)
HPVワクチンまとめ
HPV感染症を防ぐワクチン(HPVワクチン)について解説しました。
HPVワクチンは子宮頸がんワクチンともいわれていますが、子宮頸がん以外の病気も予防します。
コロナワクチン接種をみてもわかるように、一定の副反応は必ず起こります。
予診票が届く前でも接種は可能なので、ぜひ親子で話をしてみて下さい。
少なくとも中野区が男子にも接種費用を全額補助するのは、
選択肢を広げるという意味で歓迎すべきこと。
人生100年時代、日本人の2人に1人は癌にかかると言われています。
ワクチン接種によるメリット、デメリットをよく知った上で、ぜひがんの予防を。
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